おいしい薬味
日本のスパイス&ハーブの話し
Vol. 62
刺身や寿司には、わさび。うどんやそばに、ゴマ、刻みネギ・・・。日本食のとなりに、何気なく添えられている「薬味」とよばれるスパイス&ハーブ。それらは、風味を豊かにするほか、体にいい効果もたくさん! それぞれに、味も効能も異なるが、
・成分と香りで素材の臭みを抑える。
・殺菌効果がある。
・食欲をアップさせる。
・エネルギーの代謝を促して、肥満予防につながる。
などは、共通するところ。「薬味」の名の通り、その昔は、実際、薬として使われていたものもたくさんある。
ただ、あくまで食品。おいしいから、体にいいからと、摂りすぎないよう、ご注意を。
日本料理に欠かせないスパイス
わさび
わさびは、日本原産。キレイで豊富な水のあるところでしか育たない、贅沢な植物だ。その根の部分をすりおろして使う。
鼻から抜ける、峻烈な辛味。色も香りも鮮やかだ。腐敗防止の効果があり、魚や肉の臭み消しにも使われるが、健康効果にも注目! ビタミンCは、レモンより多く、老化や血栓を予防する作用もある。ホースラディッシュとは、辛さの成分もアブラナ科の植物であることも同じだが、色や香りが全く異なるので、比べてみよう。
生のわさびを出してくれる店は、超、貴重。そんな店に出会ったら、まずは大将の手元に注目だ。細胞を壊すことで辛味が十分でるよう、きめの細かい、特殊なおろし金を使ってすりおろす。おろしたての香りは、まさに絶品! 刺激的な辛味の中に、かすかに感じる甘味は、生ならではだ。でも、生わさびは手に入りにくい。ふだん使いには、手軽に楽しめるチューブわさびがお勧めだ。
和からし
ツーンとくる、際立つ辛さ。ぴりっとした味わいは、おでんや煮物に欠かせない。色が似ているため、よくマスタードと比べられるが、原料となる植物、カラシナの種類が異なるため、辛味成分も味も別物だ。和がらしはマスタードのように酢などを混ぜない分、辛味が強く、揮発性があるので、たっぷりつけると強烈に鼻に抜ける。
日本では昔から、からしを湯で練って湿布すると、神経痛に効く、とされてきた。
殺菌、消臭効果に特にすぐれ、食中毒予防にもなるほどだ。消化液の分泌をうながす役割もあるので、便秘の予防にも。
山椒
日本最古のスパイスともいわれる山椒は、辛い、というより、しびれるような、独特の刺激と香りがある。花椒とは、同じミカン科の、けれど種類が違う植物で、山椒は日本原産。花椒は、中国原産で、香りや辛味は、山椒のほうがおだやかだ。
最も辛味のある外皮を乾燥させて粉末にしたものを、粉山椒とよぶ。胃腸の働きを活発にして、消化不良や冷えなどに効果があるとして、古くから薬としても用いられてきた。
舌を刺激することで、料理の甘味や旨味を、より鮮やかに感じられる効果があることがわかり、ここ数年、ヨーロッパの三ツ星レストランでも人気のスパイスだ。
日本料理をひきたてる、ハーブ
調味料として使うもの・・・ 青じそ、山椒の若芽、あさつき、など。
香りのある野菜として使うもの・・・三つ葉、春菊、茗荷など。
そのほか、日本を代表するスパイス、七味唐辛子がある。五香粉と同様で七種類の組み合わせに特に決まりはなく、唐辛子、山椒、芥子の実、黒ゴマなどを、好みでブレンドして使う。また、生姜は、各国で薬や料理に使われているが、日本の料理では特に、鰹のたたきなどの臭み消し、とうふや、うどんなど淡白な味のものの香りづけに、すりおろした生姜をそのまま乗せる、といった使い方をする。
いつものメニューにちょっと加えるだけで、味が引き締まり、箸がすすむ、スパイス&ハーブ。おいしさと自然の力を、心ゆくまで味わいたい。
さあ、存分に楽しめるお店に、Let`s Go!